君のいいところ、1つしか思いつかない。
「いいんじゃない?
篠宮、彼女いないでしょ」
その言葉に、ちくんと胸が痛んだ。
「…そう、だね」
彼女は、いないけど。
…考えないようにしてたのに。
辛いことは、考えないようにしてるのに。
思いっきり結城くんを睨みつけるという完全な八つ当たりをして、前に立っている彼をよけて図書室を後にする。
「待ってよ」
「なに」
「一緒に帰ってくれないの?」
ニコニコと聞いてくるその笑顔に、
「帰らないでしょ」
とだけ言って階段を早足で降りる。
やっぱ面白いやつ、なんていう結城くんの声は聞かなかったことにした。