君のいいところ、1つしか思いつかない。
2人きりって、どうしてこんなに緊張するんだろう。
人の来ない階段に座るあたしたちの間には、1人分くらいの距離がある。
それでもあたしの左側にいる晴に意識が集中して、左側の髪だけ無駄に手櫛で梳かしてしまう。
「…で、どうしたの?」
「え、と…」
先生のことを話さずに何て言えばいいんだろう。
言葉に詰まった沈黙のあと、
「…篠宮絡み?」
こくん、頷いたまま俯いた。
「どうしていいか、分かんない…
力になりたいのに、背中押してあげたいのに、あたしじゃ何も出来ない…っ」
言ってることもぐちゃぐちゃで、うまく話せないこんなあたしの言葉を待ってくれる。
本当に、優しい人で。