君のいいところ、1つしか思いつかない。
「…」
紗月ちゃんは今頃、篠宮に告白しているのかもしれない。
体育館裏に向かう2人を見かけて、自分で思っていたよりも大きなショックを受けていたらしい俺は、いつもの空き教室にいた。
自分で、背中を押したわけで。
あの時に強引に奪おうとすることだってできたのに、それをしなかったのは優しさと言うよりは弱さで。
思いっきり紗月ちゃんの手を引くことが、俺にはできなかった。
…いいと思ってた。
それで背中を押せたなら紗月ちゃんも幸せになれる。
自分も傷つかなくて済む。
背中を押した選択は、間違ってないと思ってた。