君のいいところ、1つしか思いつかない。
キーンコーンカーンコーン
「あたし飲み物買ってくる」
「おっけー、先食べてるね」
そう言って教室を出て、お茶を買った帰り道。
「あの、わたし…」
中庭に面している廊下を歩いていると聞こえた声に、何気なく目を向ける。
と、中庭にいたのは大人しそうな眼鏡の女の子と、結城くんだった。
ああいうタイプの子まで手玉に取ってるのか、と、無意識に眉間にシワが寄る。
「わたし、結城くんが話しかけてくれたおかげでクラスのみんなとも仲良くなれて、すごく嬉しくて…
その、好き、です…」
顔を真っ赤にして俯いている。
これじゃ盗み聞きだと我に返り、急いで廊下を歩くと。
「ありがとう、でもごめんね。
気持ちには答えられないかな」
少し困ったように眉を下げる結城くん。
「あ、遊びでもいいから!
周りにいる女の子の1人でもいいから…」
「…ごめん、できない」
「何で…?
わたしが可愛くないから?地味だから?」
泣き出してしまったその子に、思わず足が止まってしまう。