君のいいところ、1つしか思いつかない。
「うーん…」
図書室から帰ってきたあたしは、メイクポーチと睨めっこする。
いつものピンクのグロスと、この前買った赤のグロス。
三波先生が赤いリップをしてたから、買ったんだよな。
そんなことを思い出す。
「…こっちかな」
選んだのは、ピンクのグロス。
三波先生みたいに、ならなくていい。
まだ大人じゃなくてもいい。
晴が好きになってくれたのは、大人っぽくない、そのままのあたしだから。
ストロベリーの香りのグロスをつけて、よし、と鏡を閉じた。