君のいいところ、1つしか思いつかない。




「気をつけ、礼!」



日直の号令で終わった最後の授業。


帰る支度をしていると、ドアの方から呼ばれた名前。





「紗月ちゃん」




「あっ、今行く!」



慌ててバッグを持って、はーちゃんに手を振って晴のもとへ向かった。





「え、あの2人って…」
「付き合ってるの!?」




クラスメイトの言葉に、教室中の視線が集まる。

う、どうしよう…。



チラリ、と晴の方を見る。





「そうだよ」



晴はいたずらっぽく笑うと、あたしの手を握って教室を出た。





「えー!?」
「うそー、晴のこと好きだったのに…」
「いつから付き合ってるの!?」



一瞬でザワザワと騒ぎ出す教室に背を向けて、晴に手を引かれながら歩く。




そうだよ、って言ってくれたことが嬉しい。


あたし、晴の特別になれるのかな。




握った晴の手が大きくて、温かくて、幸せ。






< 235 / 296 >

この作品をシェア

pagetop