君のいいところ、1つしか思いつかない。
「気をつけ、礼!」
日直の号令で終わった最後の授業。
帰る支度をしていると、ドアの方から呼ばれた名前。
「紗月ちゃん」
「あっ、今行く!」
慌ててバッグを持って、はーちゃんに手を振って晴のもとへ向かった。
「え、あの2人って…」
「付き合ってるの!?」
クラスメイトの言葉に、教室中の視線が集まる。
う、どうしよう…。
チラリ、と晴の方を見る。
「そうだよ」
晴はいたずらっぽく笑うと、あたしの手を握って教室を出た。
「えー!?」
「うそー、晴のこと好きだったのに…」
「いつから付き合ってるの!?」
一瞬でザワザワと騒ぎ出す教室に背を向けて、晴に手を引かれながら歩く。
そうだよ、って言ってくれたことが嬉しい。
あたし、晴の特別になれるのかな。
握った晴の手が大きくて、温かくて、幸せ。