君のいいところ、1つしか思いつかない。
ピンクの浴衣
「晴に本命できたって聞いた?」
トイレのドアを開けようとして、聞こえた言葉に手を止める。
「あー、岸田紗月でしょ?」
「あ、聞いたそれ」
3人くらいの声。
何を言われるのか怖くて、でも良いことではないってことだけはわかって。
聞きたくないのに、足が動かなかった。
「どうせすぐ別れるでしょ」
「うん、晴が飽きるって」
「だよねー、あの子特別かわいいってわけでもないし」
やだ、言わないで、聞きたくない…。
キュッと目を閉じても、聞きたくない言葉は容赦なく耳に入ってくる。
「女慣れしてる晴があんな普通の子で満足するわけないじゃんね!」
「そーそー。積極的でもなさそうだし」
3人が出てきそうになって、やっと動いた足。
慌ててその場から逃げた。