君のいいところ、1つしか思いつかない。
ドカッ
突然視界を奪った影と、解放された腕に驚いて涙の溜まった目を開ける。
そこには、よろける男の人と、あたしたち2人をかばうように立つ結城くんがいた。
「晴!」
「結城くん…」
「お前誰だよ?」
「邪魔すんなよ…」
明らかに怒ってる2人。
結城くんはあたしとはーちゃんの手を握り、あたし達にしか聞こえないくらいの声で囁く。
「…俺が気を引くからすぐ逃げて」
「え、でも…!」
「大丈夫、店員さんもいるし大事にはならないから」
はーちゃんと顔を見合わせて、わかった、と頷いた。
「おい、聞いてんのかよ?
邪魔すんじゃねーよ」
「そっちこそこの2人に手出してじゃねーよ!」
ガッと胸ぐらに掴みかかる結城くんを見て、はーちゃんの手を引いて走って店を出る。
それと同時くらいに、さすがにまずいと思ったらしい店員さんが慌てて3人を止めに入っていくのが見えた。