君のいいところ、1つしか思いつかない。
ガラッ
静かに開いたドアだけど、静かな図書室にはその音すら響いて、顔を上げる。
「あの、…篠宮くん、来てくれる?」
「っ…」
古典の、三波果歩先生だった。
…篠宮くんの、好きな人。
「…何?」
少しだけ動揺した声に、胸が苦しくなる。
いつもはもっと冷たい声で。
もっと面倒臭そうで。
でもやっぱり、違うんだね。
先生は、特別なんだね。
「古典の課題、書いてないところがあって…」
「どこ?」
「ここなんだけどね、」
2人で古典の課題のプリントを覗き込んでいる。
あたし、あの課題出したっけ?
…出してない気がする。
篠宮くんは頭が良くて優秀だから、先生もわざわざ見せに来たのかな。
…それとも?