君のいいところ、1つしか思いつかない。




バニラシェイクの甘すぎるバニラ味が口の中に残る。






「前の俺ならさ、諦めた方がいいって言うと思うんだよね。

そもそも恋なんかでそんなに悩むのは馬鹿だと思ってたし。

恋なんてさ、相手のことが好きな自分に酔ってるだけだろうとも思ってた」





結城くんの本心は、初めて聞いたような気がする。


いつもいつも作ったような笑顔とか、言葉とか。

だけどきっとこれは本心なんだって、結城くんの表情が言ってた。





「…でも、恋ってあるかもね。
後悔しないように頑張ればいいんじゃない?」




少し切なげなその顔に、違和感。

切なそうな理由がわからなくて。


もしかして結城くんも、片想いなのかな。





「そう、だよね…頑張る!」




よし、ともう一度バニラシェイクを飲むあたしに、


「…あー、応援したくなかったのに」



って小さな呟きは届かなかった。







< 62 / 296 >

この作品をシェア

pagetop