君のいいところ、1つしか思いつかない。
「…晴って呼んでよ」
グッと近づいた距離に、耳元で囁かれた言葉。
耳に吐息がかかって、大袈裟なくらいビクッとしてしまう。
低くて、色っぽいその声に、クラクラする。
近すぎる顔が恥ずかしくて、必死に下を向いてもクイっと顎を掴んで上を向かされてしまう。
なに、これ。
ドキン、ドキン、と心臓の音がうるさい。
熱すぎる頭は思考を停止して。
「はな、して…結城、くん」
「違う、晴」
やっとの思いで絞り出した声も、たったの5文字で返されてしまう。
「は…っ、る」
顎を掴まれたまま、精一杯目を逸らして言った。
顔を見ながらなんて、言えるわけなくて。
「…ちゃんと目見て言って」
なにそれ、ワガママ。
ちゃんと呼んだのに…。
恥ずかしくてドキドキして、少しだけ目が潤む。