【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
「そういうわけじゃない」
「っ、だったら、」
「……全部、黙ってた俺のせいだな」
乃唯ちゃんが、夕咲ちゃんの手を離す。力強く掴んでいた割に、夕咲ちゃんは手を大人しく離した。
「……早とちり、だ」
「……早とちり?」
稀沙ちゃんが、乃唯ちゃんの言葉を復唱して。そして乃唯ちゃんはそれに頷くと、「数年前、」と口を開いた。
「俺が偶然、急いでた女とぶつかったんだよ。
──それは、本当は羽歌だった」
らしくねぇけど俺の一目惚れだ、とつぶやいた彼。幹部室には彼の声だけが静かに落とされて。
夕咲ちゃんは、怒りの中でも事実を知ろうと、彼から視線をそらすことはなかった。
「たった1回会っただけだし、な。
でも、次会ったときに、咲乃の知り合いの女で。まさか同じ学校にいたなんて、お前らも知らなかっただろ」
僕は後からすこし聞いただけだから、詳しいことは知らないけど。
乃唯ちゃんたちは高校で授業をよくサボっていたし、元から人数が多いため〝羽紗ちゃん〟の存在を知らなかったらしい。
「でも、咲乃を通して知り合ったのは〝羽紗〟の方だった」