【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
08.巻き戻せるまで
「羽歌、待てよ!」
──ぱし、と。倉庫を出たところで腕を掴まれて、立ち止まると振り返る。私の腕を掴んだ本人が、「あ、」と小さく漏らした。
「お前、泣いて……」
「っ、」
やっぱり、見抜かれちゃったか。隠せるだなんて、拭ってもないんだから微塵も思ってなかったけど。
「時間、巻き戻したい……」
──あんなこと、言うつもりじゃなかった。
だって、咲乃が戻ってこないのは彼のせいなんかじゃない。私に魅力を感じなくなったか、羽紗が私以上の女になったか。
──いや、元から。あの子は、私以上の女だったか。私が軽く調子に乗ってるのは自分でもわかってる。
だって、そうしなきゃ楽しんでこれなかったから。
神無月に縋らなきゃ、私は居場所を失うから。
「……戻りましょう、か」
「いや、抜け出してきたのにそれも癪だろ。
近くのカフェでパフェ食べて帰ろうぜ」
なに呑気なこと言ってるんだこの男は。