【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-



にこりと笑う稀沙。柚ちゃんは「こんにちは」と笑顔で言ってるあたり、和泉と顔見知りではあるらしい。



「和泉さんと羽歌ちゃんもデート中ですか?」



「ん?あー、まぁそんなもん」



「あんまり横取りしないであげてくださいね。

岬、今回はかなり本気みたいで」



胸の内に、黒い何かが押しかかってくる。そう、よね。彼と付き合うと言っておいて、私はどうして和泉を選んでるんだ。



「──だから、今日は幼なじみのところへ行ってくるって」



──え?




「幼なじみ、って、」



「そ。〝澪さん〟のところ。

羽歌ちゃんには内緒にしておいてって言われたから、俺が言ったことは内緒ね」



あいつから直接聞いて、と稀沙は微笑むけれど。全然笑えない。だって、私は。



「それほどあいつは、真剣なんだよ。

羽歌ちゃんにベタ惚れみたいだから」



女の子に言うのもなんだけど、大事にしてやって。──そう言って稀沙は和泉に「じゃあ」と声をかけて、柚ちゃんと歩いていく。



柚ちゃんはぺこりと頭を下げてくれたけれど。



──やっぱり私は、笑えなかった。



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