【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
蘇る記憶に、手から先ほど買ってきたばかりの缶が滑り落ちる。
重力に任せ床にぶつかったそれは、カツンッと大きな音を立てた。
「──……羽歌?」
扉の向こうから柔らかい声がして、扉が開く。はっと我に返った私は、落ちた缶を拾い上げて「ごめんなさい」と笑みを作った。
「お話してるみたいだったから、後にしようと思って引き返したら、落としちゃったの。
結局、邪魔しちゃったわよね……?」
「大丈夫だよ、話は終わってるから。
羽歌ちゃん、俺ちょっと先生のところ行かなきゃいけないから、乃唯(のい)のそばにいてくれる?」
こく、と頷く。
私と入れ違いで出ていく彼は、さらりと私の頭を撫でて部屋を出ていった。
「ごめんね、乃唯。
乃唯の買ってこようとしたんだけど、」
白いベッドに横になる彼の隣にある椅子に腰掛けながら口を開く。
彼の腕に残った傷跡は大きくはないけれど。巻かれた包帯は痛々しくそこを強調していた。
「──ん」
手を出されて、「え?」という顔をした私に、彼は「それ」と落ちた缶を指さす。
「いや、でも、」
「別に中身が汚れたんじゃねぇし飲める。
せっかく羽歌が買ってきてくれたのに、勿体ねぇだろ?」