【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
唇を噛んで、何事もなかったかのように「遅いわよ」と告げる。大丈夫だ。私はまだ、神無月の令嬢を演じられる。
「ごめんね。
咲乃がずっと落ち込んでて、連れてくるのに手間取っちゃった」
……落ち込んでた?
「ああ、心響に戻れなかったんでしょう?
乃唯が羽紗を好きじゃなかったとしても、総長の女を取ったから切られたんだものね」
「ううん、そうじゃなくて」
私の右側に羽紗、左側に咲乃が座る。
「お姉ちゃんが、彼氏を作ったから」
──は?
「なに……?
私が男を作っちゃダメなわけ?自分は羽紗と浮気しておいて、都合がいいのね」
「それは違うよ、お姉ちゃん」
「何が違うのよ」
「お姉ちゃんの、幸せのためだったの……っ」
──悪いけれど、まったくと言っていいほどに意味がわからない。私の幸せのため?あなたたちのせいで、私がどれだけ悲しんだと?苦しんだと?
悲劇のヒロインぶるつもりはどこにもないけれど、ものすごく腹が立つ。
「ずっと、俺は羽歌が好きだったよ」