【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
「泣かないで、羽歌」
「っ……」
「いつからそんなに泣き虫になっちゃったの……?」
「泣きたくもなるわよ……っ」
この子が咲乃のそばにいたのは、私のためだった。誰でもなく〝私〟を守ろうとしてくれていた。
とっくに、大切な人はそばにいたのに。
「羽紗が傷ついてること……
私がわかってあげられなかったから……」
──私は、贅沢だった。私を見てくれる人が、こんなにも近くにいたのに。その子の哀しみには気づいてあげられなくて。
「ごめんね、羽紗……っ」
「お姉、ちゃん……」
「気づいてあげられなくて、ごめん……っ」
羽紗が「羽歌……」と、小さくつぶやいて、私の背中にぎこちなく手を回す。
──ああ、そうか、私。
羽紗のこと、こうやって抱きしめてあげたことなんてなかった。小さい頃からずっと一緒にいたのに。
いつだってひたむきに私のことを思ってくれていた羽紗の気持ちを、蔑ろにしていた。