【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-



シンとした空間に、和泉の声だけが落とされて。



「だ、め……?」



──もう、自分の感情を否定する気にもなれなかった。好き。そんな感情いっそのこと捨ててしまえば楽なのに。



捨てたい感情ほど、捨てられなくて。



ゆっくり顔を上げて問えば、和泉は「いや……」とそれを否定する。

そして、涙が流れたわけでもないのに、私の目元を指で撫でた。



「お前が咲乃のこと好きなのは、

たぶん誰よりも俺が知ってる」



「うん……」




──私も、そうだと思う。



咲乃に出会ったのは、和泉がきっかけだった。そしてそばで見守ってくれていたのも、和泉だった。

私たちが付き合った時に、誰よりも「おめでとう」って喜んでくれて。



そして、あの日は、



「お前の咲乃への、想いは……

俺にとって眩しいぐらい綺麗なんだよ」



──誰よりも、私の気持ちを否定せずに、私に優しくしてくれた。



「だから、否定しない」



──そして今も、彼はどれだけ私がつらい思いをするとしても選んだ道を、絶対に否定しない。



< 36 / 368 >

この作品をシェア

pagetop