【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
「……たまにね、」
「ああ」
「和泉を……好きになれたらって、
本気でそう思うことがあるの」
私をいつだって支えてくれて、そばにいてくれて、頼れる優しい彼を。好きになれたら、絶対幸せだろうなって。
「私が、もし……
和泉を好きになったら、」
──どうする?
その言葉は、彼が私の唇を手で塞いだことによってかき消される。
「それ以上、言うなよ……」
そう言って顔をそむけてからため息をついた和泉の耳が、ほんの少し赤い気がする。
ああ、そっか。和泉は、羽紗のことが好きだから。──同じ顔の女に言われたら、確かに赤面するわよね。
「和泉だけ、ね」
口元の手をそっと離して、それから自分の手を重ねて、意味もなく彼の手で遊ぶ。──視線は、手に向けたままで。
「私を、〝羽歌〟として扱ってくれるのは、あなただけなの」
──彼らは、私を羽紗の代わりだと思ってる。親は、私を神無月の令嬢だと思ってる。
羽歌として私を大切にしてくれるのは、和泉だけで。──やっぱり彼を好きになればよかったと、心の中でため息をついた。