【完】GUILTY BOYS -囚ワレノ姫-
「私は、羽紗の代わりの人生も……
神無月の令嬢の人生も必要ないの」
ただ、神無月羽歌という、ちっぽけなひとりの少女として、何気ない人生を歩みたいだけなの。
誰かが聞いたら、きっとわがままだと言うんだろう。お金持ちの暮らしをして、憧れられる暴走族の身代わりの姫のクセに、何を言ってるんだって。
それでも、普通でよかった。
「……お願いだから」
和泉だけは。
「羽紗と……
一緒に、しないで」
──言った瞬間、痛いほどに強く抱きしめられて。今日は和泉によく抱きしめられるな、なんて呑気なことを思ってしまった。
「俺は、」
引っ付くな、なんて、あなたの方が私を抱きしめてるじゃないの。
「俺は、お前が……」
「和泉」
──あなたが言いたいことは、なんとなくわかるから。もうそれ以上、何も言わないで。
そんな意味を込めて彼を制すると、私は「先にお風呂入っていい?」と、漂うなんとも言えない空気をかき消す。