愛したのが君で良かった
『希子さー、告ったりとかしないの?』
親友の突然の問いかけに、私は驚いて、持っていた箸を床に落としてしまった。
『へ…何その動揺っぷり?』
慌てて箸を床から拾い上げて、私は自分の椅子に座りなおす。
そして、口を開いた。
『…私は、絶対にこの気持ち、アイツには言わない』
『…なんで?』
麻奈美は怪訝そうな表情で、首を傾げ問いかけてくる。
『私はこんな体型だし、こんな性格だし…。
私なんかがそんなことを言ったらアイツはきっと困るだろうし、それに、今みたいに接してくれなくなったら、そう思ったら悲しいし…だから言わない』
麻奈美は私の言葉を聞き、そして溜息をついた。
『体型も性格も自分で意識すれば改善できるっしょ?
それにさ、悠哉だっていつまでフリーでいるか分かんないよ?』
そう、麻奈美の言う通り、悠哉はあんなにかっこいいのに、告白だっていっぱいされてるのに、それでもまだ一度も特定の人と付き合ったりとかないんだ。
噂されるような人もいたけど、それでも悠哉はまだフリーのまま。
『でも、だったら余計に言えないよ…』
『なんで?』
『だってそれって…もう心の中に特別な人がいるってことでしょ?』
私の言葉に、麻奈美はもっと深い溜息をついた。
『希子さー、悠哉の好きな人って希子なんじゃない?』
麻奈美の口から投下された爆弾。
そ、そんなことある訳が無い!!
『麻奈美、それは天変地異が起きてもありえないから』
そう、あるわけがない。
だって、そうでしょ?
ドラマや漫画の世界とは違う。
ハッピーエンドなんかありえない。
『じゃ、なんでいつも希子のお弁当食べてんの?』
お弁当…?
『ほら、見てみー』
麻奈美はそう言って、ある方向を指差す。
そこには男友達とじゃれ合って楽しそうにしている悠哉の姿。
そして、そこに訪れる可愛い子たち集団。
『悠哉ー、これ、食べてみて♡』
一生懸命、あの子も作ったんだろうな…。
『あーごめんね、俺、もうお腹いっぱいなんだわー』
でも、悠哉は申し訳なさそうな顔で、そう言った。
『えー…せっかく早起きして作ったのになー』
女の子たちは案の定、文句を言う。
でも、悠哉は面倒くさい顔一つしないで、
『マジでサンキューな、今度はお腹すいた時にでも頂戴?』
そう言って、微笑んだ。
バッカみたい…
悠哉も、あの女の子達も。
女の子たちは悠哉の言葉に、もう目がハートになってる。
でも、きっと。
さっきの私も、あんな風だった。
バッカみたい……
叶わない想いだって、届かない気持ちだって、そう自分で分かってるのに。
でも、悠哉のあんな顔を見せられるとそれだけでまた恋してしまう。
本当にどうしようもないくらい、バッカだな……私。