愛したのが君で良かった



『希子のお弁当は食べて、あの子達のお弁当は断る。
 あれってさ、そういうこと、じゃないの?』


思いっきり悠哉と女の子達集団に目がいっていた私に麻奈美はそう言った。




『…………』



『知ってた?
 悠哉って、いつも希子のお弁当のおかずとパン一個だけしか食べてないんだよ?』



麻奈美の言葉を聞いて、初めて知った彼の昼食内容。



『だから、太んないんだ、アイツ』



『ちーがーう、あんたのお弁当を食べたいから、パン一個なんだよ、あの巨体で!』



私のお弁当を食べたい…?


嘘だよ、そんなことあるわけないじゃん。



だって、だって…


あんな風に選り取りみどりの女の子達がいる人だよ?

選り取りみどりの女の子達が想いを膨らませてる人だよ?


そんな人がデブで、胸なしで、バカで、性格も悪い、そんな私を好きだと思うはずがない。





『ね、希子?
 明日さ、悠哉のお弁当を別に作ってあげたら?』


その突然の提案にも、私の心は揺るがない。



『そんで、桜澱粉でハート作って、のりで“スキ”とかやってみたら?
 もしかしたら悠哉から嬉しい返事をもらえるかもよ?』


そ、そんなお弁当…

高校生男子は嫌がるよ…

例え彼女からであっても、普通の男子高校生なら引くって…






『希子、自分で行動を移さないと幸せは来ないんだよ?』





でも。


でも。



“スキ”の言葉は別としても、お弁当くらいなら作ってもいいかな…?



“いらない”って言われたら二度と作らなければいいし…


うん、そうだよ、いつもおかず取られるから、そう言っちゃえばいいんだし…





『…お弁当くらいなら……』



気持ちは伝えないけど。


でも、お弁当くらいなら、いつも“うまい”って言ってくれるし。





うん、お弁当くらいなら。





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