雨木ちゃんにしては失意な恋

草野は薄く流れる鮮血を眺め、ゆっくりしゃべった。

「…えつこは昔のこと思い出したりする? 俺はするよ。毎日思い出す。
あれってなんでなんだろうな。
人間は自分が忘れたい記憶から順にどんどん忘れていく仕組みなのに、どうして一番忘れたいことは忘れられないんだろう」

< 107 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop