雨木ちゃんにしては失意な恋
二人は出会ったあの日以来、初めて、
二人で表に出る。
外は空気がむうっと暑く、太陽は容赦なく生き物を焼き付ける。
それが夏というものだ。
えつこは、水色のストライプのシャツと紺の短パンをはいていた。
靴まで草野のものだった。
ぶかぶかのスニーカーはカポカポと小気味よい音を立てる。
少ない二つずつの荷物の入ったカバンを
草野は背負って、えつことN駅まで歩いた。
「手をつなごう」
草野はえつこの小さな手を引く。
人混みの中を二人の男女が歩いてゆく。
「暑いな」
草野は手首の傷が見えるのも気にせずに、カッターシャツの袖をまくった。
その潔さが好きだとえつこは思った。