落ちる恋あれば拾う恋だってある
修一さんから家事をしてほしいと一度も言われたことはない。けれどそれが当たり前という態度だった。労う言葉を言うことはだんだん少なくなっていた。
私は修一さんの腕の中から抜け出し立ち上がった。
「帰ります」
初めて怒鳴られて体が委縮する。今の修一さんとは話し合いができない。今夜は離れた方がいいと思った。
「待ってよ! このまま終わりなの!?」
修一さんは玄関に向かう私を追いかけてきた。強引に私の腕を掴むと体を引き寄せる。
「僕ばっかり我慢して夏帆はワガママじゃない!?」
ワガママだなんて言われるとは思っていなかった。私のこの気持ちは修一さんにとってはただのワガママにしか受け取れない。
もうこの人とは価値観が違いすぎる。
「放してください……」
声まで震えてきた。目の前の優しかったはずの男性が怖い。
「僕は夏帆を愛してるんだよ!? 大事にしてきたじゃないか!」
修一さんは顔を真っ赤にして私を睨みつける。
「夏帆を怖がらせないようになるべく優しく触ったでしょ!?」
「あの……」
優しいとは言えないほど強く腕を掴まれて恐怖で足まで震えてきた。
何も言葉を発しないで怯える私の体を修一さんは壁に押し付けた。そのまま噛みつくような強引なキスをされて、押し付けられた後頭部と唇に軽く痛みを感じた。
数分にも感じた長く激しいキスに息苦しくなり呼吸が荒くなる。
やっと唇を離した修一さんは「一緒に住んだら生活に不自由はさせないよ!?」と尚も私に縋る。
「そうじゃなくて……」
「それとも、僕が夏帆をこんな風に求めすぎたのがいけなかった?」
「え?」
修一さんの手が私の両手を壁に押さえつける。