落ちる恋あれば拾う恋だってある

「夏帆とセックスしたいって望んだのが嫌?」

焦りと怒りを含んだ目に更に恐怖心が湧き上がる。

「彼女と部屋に居たらそういうことしたいって思うのは普通じゃん! だけど夏帆がその気になるまで僕は我慢してたよ!?」

屈んだ修一さんはブラウスの襟から覗く私の首元に強く吸いついた。経験したことのない痛みに涙が溢れる。

「いっ!……っ」

それ以上は言葉にならなかった。腕を拘束されたら哀願する修一さんに本気で抵抗することはできない。

「無防備に家に来られたら僕だって限界だよ!」

「修一さん! やだっ!」

「だめ、離れたくない……夏帆っ」

鎖骨に強く吸いつかれて痛みで涙が頬を伝う。

体をよじって抵抗すると自分の服が乱れるのを感じる。

『君みたいな子はちょっと強く出れば簡単にヤれちゃうんだから』

椎名さんの言葉が思い出される。本当にその通りだ。

修一さんは繰り返し「愛してる」と囁く。何も言い返せない私はひたすら首を振って抵抗する。
どんなに泣いて拒否しても修一さんは私を解放しようとはしない。

このまま修一さんに乱暴に扱われる。そんなの悔しくて悲しい。

私のことなんて見てくれない。言葉を受け止めてくれない。本当に愛してるわけじゃない。

一方通行の言葉を植え付け、呪文のように囁く声が私の心も体をも縛りつける。
脳裏には椎名さんの顔が浮かんでいた。

椎名さんならこんなふうに私を縛ったりはしないだろうか。甘やかしてくれるのだろうか。乱暴じゃなく優しく抱いてくれるのだろうか。

私を想ってくれる椎名さんの気持ちを受け流して、私を利用する恋人に獣のように体を貪られている。

このままでいいの? これじゃ何も変わらないじゃない……。

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