落ちる恋あれば拾う恋だってある
「夏帆ちゃん!」
「あ……」
顔を上げると焦った顔の椎名さんが立っている。来てくれた嬉しさで涙が出る。この人は私が辛い時、私のために来てくれる人なんだ。
「大丈夫? 何があったの?」
「あの……」
何をどう言ったらいいのだろう。椎名さんを呼んだのは私なのに言葉が出ない。
「なんか髪も服も乱れてるね。あれ? ボタンは?」
椎名さんの目線を追って自分の胸元を見ると胸元が第二ボタンまで大胆に開いている。
「これでここまで来たの? よっぽど動揺したんだね」
椎名さんは笑いながらしゃがんで私と目線を合わせる。
「夏帆ちゃん……これ何?」
「え?」
椎名さんはブラウスの襟に手をかけて鎖骨が見えるよう大きく広げた。
「ちょっと!」
下着まで見えてしまいそうで、こんなところで恥ずかしくて怒ってもそれ以上に椎名さんは怖い顔をする。
「これどうしたの?」
椎名さんが目を見開いたから首に手を当ててハッとする。
「これは……」
先ほど修一さんに強く吸われた。きっと私の首元には赤い痣がある。
慌ててブラウスで隠す。そんな私に椎名さんは動揺したようだ。
「その手首も」
「手首?」
自分の両手首を見ると赤くなっている。修一さんの手で押さえつけられていたから擦れたのだろう。
「ねえ、なんで夏帆ちゃんこんな姿で泣いてるの?」
「それは……」
「普通さ、キスマークつけられる状況ってボロボロに泣くものじゃないよね?」
「…………」
「それ、夏帆ちゃんが望んだこと?」
再び涙を流しながら首を振った。
「そうか……」
椎名さんはぎゅうっと私を抱きしめる。
「椎名さん?」