落ちる恋あれば拾う恋だってある
「何が?」
私は躊躇いながら思い切って切り出した。
「初めてなので……椎名さんを全然気持ちよく……させられない……です……」
消え入るように絞り出した言葉を聞いた椎名さんは目を見開く。
「え……初めてって……横山さんとは?」
「一度も……私が緊張してしまって……」
椎名さんは私の肩に顔を埋め「マジか……」と呟いた。
「すみません……」
「謝ることないよ。むしろ嬉しい……」
椎名さんはそのまま私の首に何度も優しく口付ける。
「今も緊張する?」
「いえ……恥ずかしいですけど、椎名さんには緊張しないです……」
この人に触れられると安心する。私の嫌がることはしないって分かっているから。椎名さんは私を大事にしてくれる。
「それでも、自信がないんです……」
こんな時なのに涙が出そうだ。
「私、椎名さんに似合うような女じゃないんです……地味で暗くて……自分に自信がない……だから恥ずかしくて」
「前に言ったでしょ。そのままの夏帆ちゃんの全部が好きだよ。だから、俺には全部見せて」
椎名さんなら弱い私でも受け入れてくれる。弱いままでも励まして立ち向かう力をくれる。溢れた涙を拭ってくれる。
「椎名さん……好きです……」
唇が塞がれて舌が口の中に入ってくる。だけど嫌な強引さじゃなくて、椎名さんの香りが充満するベッドで椎名さんに包まれて体が溶けてしまいそうなほど愛情のこもったキスが体中に降り注いだ。