落ちる恋あれば拾う恋だってある
「……ちゃん、夏帆ちゃん!」
「は、はい!」
椎名さんを思い出すことに集中して中田さんに話しかけられても気付かなかった。
「大丈夫? 酔った?」
中田さんは首を傾げ、私の顔を覗きこんだ。
「いえ、大丈夫です……」
「そうだよね、もっと飲みな。これ全然飲んでないじゃん」
中田さんは私の前にあるグラスを指差す。最初に頼んだビールを半分以上グラスに残したままなかなか飲めないままでいた。中田さんがドリンクメニューを持つと私により近くくっついて座ってきた。
「このイチゴのカクテル美味しそうだね。頼んであげるよ」
「あ……りがとうございます……」
私はグラスを空けようとビールを少しずつ飲んだ。
ふと視線を感じて顔を上げると、また私を見る椎名さんと目が合った。更に居心地が悪くなって、新しくきたカクテルを一気に飲んだ。
お開きになり店の外に出ると火照った体に夜風が気持ちよかった。ふらついて頭がぼーっとする。
結局中田さんに何杯も飲まされてしまった。次々に飲み物を頼んでくれて、断るのも悪い気がしてしまったのだ。
「カラオケ行く人は俺についてきてー」
彼氏さんの後ろに何人かついて歩き出していた。私は酔ってぼーっとしているし、明日は出勤日だからこれで帰るつもりだった。
「夏帆ちゃん二次会行く?」
お店の前で先輩に声を掛けられる。
「すいません先輩、私は帰ります」
「そっか。今日はありがとね。夏帆ちゃんは楽しめた?」
「はい、とっても楽しかったです」
楽しかったというのは嘘だけど、初めて合コンを経験できたのはよかった。先輩には感謝だ。
「じゃあまた式のときね」