落ちる恋あれば拾う恋だってある
今のは聞き間違いじゃないよね?
「横山さん?」
「しばらく彼女はいらないって思ってたんだけど、北川さんを知るほど想いが強くなって」
これが夢じゃないのなら、もう前の自分じゃないって思っていいよね?
「僕と付き合ってください」
「私も好きです……横山さんのことが」
今私の顔が尋常じゃないくらい熱い。
「横山さんと付き合いたいです……」
「本当に?」
「はい……」
「そっか……嬉しいな」
どうしよう。隠れてしまいたいくらい照れる。嬉しいのは私の方だ。
「あのさ」
「はい」
「キスしていい?」
「……はい」
片手は繋いだまま、横山さんの反対の手が私の肩に置かれ、顔がゆっくり近づいた。目を閉じると唇に柔らかいものが触れた。
今にも心臓が破裂しそうだ。
唇は数秒で離れると、私は口を手で覆い顔を下に向けた。
初めて男の人とキスをした。一瞬のことでもものすごく恥ずかしい。そして幸せな気持ちになった。
「北川さん、もう一回言って」
「あの……好き……です」
「うん。僕も」
気づいたら私の体は横山さんの腕の中にいた。迷ってから私も横山さんの腰に手を回した。
そのまましばらく抱き合っていた。その時間は数分にも数十分にも感じられた。
こんな風に好きな人と触れ合うことを何度夢見ただろう。
ゆっくり横山さんの体が離れると「じゃあまた明日ね」と囁く。
「はい。また明日」
お互い同じタイミングで自然と手を離した。
横山さんが電車に乗るまで見送った。ドアが閉まって見えなくなるまで手を振った。私の右手には横山さんの手の感触がまだ残っている。
さて、今からスーパーに行こう。ジャガイモを買いに行かなくちゃ。