落ちる恋あれば拾う恋だってある
横山さんと毎日連絡を取り合って、社内にいる日は毎回お弁当を作って一緒に食べる。昨夜の残りを入れることが多かったお弁当が、横山さんのためなら早起きしておかずを新しく作る。でもそれが辛いとは思わない。
なんて幸せで素敵な日々なんだろう。
食堂で一緒にお昼を食べることが増えると、他の社員にじろじろと見られているとはっきり分かるようになった。
男性社員は私たちを凝視して箸が止まるし、女性社員は顔を寄せ合ってクスクス笑うのだ。
そりゃそうだよね。私と横山さんだもん。
地味子ちゃんとエリート。どう見ても不釣り合いだ。横山さんは社内では目立つ人気者。一緒にいるのがどうして私なんだって思うよね。
私たちを見てあからさまに睨んだり笑ったりする女性のグループがあった。あれは横山さんと同じ営業推進部の人たちだ。特にその中でも横山さんと付き合い始めたことを知られたくない人がいた。横山さんの元カノがこちらを凝視している。
「北川さん、また映画観に行こう。今度は夜もどこかに食べに行こうか」
「はい! 是非」
周りに何と思われようと気にしなければいい。以前から私に良いイメージなどないのだから。今は私と一緒にいてくれる横山さんを大事にしよう。
「夏帆ちゃん、ちょっといい?」
「はい」
総務部のオフィスに戻るなり丹羽さんに手招きされ非常階段に出た。
「夏帆ちゃん修一くんと付き合ってるの?」
「修一くん?」
それが横山さんのことだと気づくまで時間がかかった。確か丹羽さんと旦那さんと横山さんは同期だった。
「はい。あの……付き合ってます……」
良くしてもらっている丹羽さんには報告していなくて申し訳なかったな。
「そっか……」