落ちる恋あれば拾う恋だってある
「すみません……お話ししてなくて……」
「ううん、それはいいの。でも修一くんか……」
丹羽さんは深刻な顔をしている。
「似合わないですよね。私と横山さんじゃ……」
「そんなことないよ! むしろ夏帆ちゃんは修一くんにはもったいないし。ただ、修一くんは社内じゃ目立つからね……」
「はい……」
「二人が付き合ってることは噂になってるよ。私も同じ部署だから本当かって聞かれたし」
「そうですか……」
クスクスと笑った社員が少なくなかったことを思い出した。
私が横山さんと付き合うのはそこまで大変なことなのだろうか。面白い話題ではあるんだろうけど、誰と誰が付き合おうがどうでもいいと思えないほど暇な人たちなのか。
「夏帆ちゃん気をつけて。修一くんと付き合うことをよく思わない子はいるから」
「え?」
「修一くんがこの間まで社内の子と付き合ってたのは知ってる?」
「はい。同棲までしてたけど別れたのは聞きました」
「その元カノって誰だかは聞いた?」
「はい……同じ営業推進部の宇佐見さんですよね」
先程食堂で睨んで、意地悪く笑って、いつも雑用を押し付け、過去には私を好き勝手に中傷した、横山さんと付き合い始めたことを知られたくない人。それが宇佐見さんだ。
「宇佐見さんとはいい別れ方ではなったみたいだから」
「そうなんですか?」
「私も詳しくは知らないの。旦那に少し聞いただけだから。でも修一くんと宇佐見さんは営業推進部の中でも距離をおいてるみたい」
「そうですか……」
「気をつけてね。只でさえ面倒な雑用を押し付けられてるのに、くだらない嫉妬で更に仕事を増やされないように」
「はい……」