落ちる恋あれば拾う恋だってある
食堂で宇佐見さんの私を見る目付きが怖いと思った。その理由も理解できた。でも何をどう気を付ければいいというの?
「あと修一くんって仕事はできるけど、ああ見えて適当な性格だからそこも気をつけてね」
「そうなんですか?」
「夏帆ちゃんくらいしっかりしてる方が修一くんには合うかもね」
以前にも食品開発部の主任が『だらしないから気をつけて』と言っていた。
私はまだ横山さんについて知らないことが多すぎるのだ。
◇◇◇◇◇
倉庫でのことがあってから散々悩んだ。
夏帆に気持ちを伝えてしまった以上、遠回しに口説くよりも直球で押した方が落ちるのか、今までと変わらずゆっくり気持ちを受け入れてもらった方がいいのか。
今度は絶対に離したくない。けれど拒絶されたということは夏帆の中で俺は恋愛対象外のはず。
考えた末に、俺の中でこの間のキス未満はなかったことにした。夏帆にも今までと変わらない態度で接しようと決めた。
怯えさせたいわけでもないし、体目当てだと思われるのも嫌だから。
早峰フーズに出入りするようになって名刺交換する機会が増えた。
それは女性社員だけじゃなく、男性社員からも店に植物を置きたいからと声をかけられることが多くなった。実際に契約は増えている。
会社としてはありがたいことだが、ほとんどは担当エリアではないから俺としては得することは何もない。むしろ損している。
話しかけられ適当に相手するわけにもいかず、作業中に話しかけられると余計に長引いてしまう。
秘書の宮野という女は特に長話になる。植物が好きなだけに悪い気はしないのだが、質問攻めにされると仕事が進まなかった。
担当の前任者はそんなことはなかったのに、こんなに話しかけられるのは俺が早峰の社員とすれ違う度に挨拶をして愛想を振り撒いているせいかもしれない。