どうぞ、ここで恋に落ちて
12.等身大
「…………は?」
ポカーンと開いた口からマヌケな声が落ちた。
泣いたせいで目元が赤くなかっているかもしれないことなんてすっかり忘れて、樋泉さんから目を逸らすこともできない。
私はパチパチと何度も瞬きを繰り返してジッと樋泉さんを見上げる。
「やっぱり伝わってなかったんだね」
赤くなりながらも困ったように眉を下げる樋泉さんがとってもかわい……じゃ、なくて。
樋泉さんの言ってることが全然わからない!
「だ、だって、すずか先生のこと……」
好きなんじゃないの?
メガネを取られてあんなに照れてたし。
好きな人とうまく話せなくて、恋愛下手だけど、こんなふうに誰かを好きになれたのは初めてだから大事にしたいって……。
あれは全部、すずか先生の話じゃないの?
「この際だから、何度でも言うけど。俺、高坂さんのことが好きだよ。肝心の高坂さんに気持ちが伝わっていなかったことにも気付かず浮かれるくらい、好きなんだ」
言い聞かせるように語る樋泉さんは、確かにまっすぐに私を見つめている。
だけどそんなの……信じられない!
私は都合の良過ぎる妄想を振り切ろうと、ブンブンと勢いよく首を振った。