どうぞ、ここで恋に落ちて
沈み行く陽が最後の茜を差し、その眩しさに目を細める。
やがて夕日は街の向こうに静かに消えていき、彼の頬にほんの少しだけ朱色の名残を留めた。
樋泉さんはスッと背すじを伸ばして真面目な顔になると、ふたりの間の小さなズレを埋めるように形のいい唇からゆっくりと音を紡ぐ。
「高坂さんは俺のこと、スーパーマンか何かだと思ってるような気がするけど、それは全部、高坂さんが特別だからなんだ」
自分でそう言ってから眉を寄せて、「結局何も伝わってなくてこんなかっこ悪い告白になっちゃったけど」と笑う。
私はただ黙って、私のことを好きだと言ってくれる彼の声を聞いていた。
「俺が好きなのは高坂さんだって、ちゃんと伝わったかな?」
確かめるように覗き込まれて、ボーッとしたままこくりと頷く。
「そっか、よかった」
樋泉さんが心からほっとしたように頬を緩めて照れるから、私の涙腺はついに決壊した。
彼を見上げたままハラハラと涙をこぼす私に、樋泉さんが再びギョッとして目を丸くする。
「こっ、高坂さん? ごめん、俺、自分の話ばかりして……どこか痛い? 具合悪い?」
なんとか私の涙を止めようとしているのか、あたふたと慌てている。