どうぞ、ここで恋に落ちて
私は首を横に振った。
「いえ、なんていうか、樋泉さんらしいです。私の部屋はもっと物がいっぱいで散らかってるので……」
「そう? それなら、足して2で割るから丁度よくなるね」
私を見下ろしてふにゃりと頬を緩める樋泉さんには、セクシーなのにキュンとしちゃうようなかわいさがあって、私の頭は今にも沸騰しそう。
足して2で割るから、って……。
これからもここへ来ていいんだよって言ってくれてるのかな。
あんなに遠い存在だと思っていた樋泉さんが好きだと言ってくれることも、一緒に過ごすことを当たり前だと思ってくれることも、まだメガネの秘密すら知らなかった今朝の私が聞いたら絶対信じてくれないと思う。
嬉しくて、くすぐったくて、夢みたいで、気を抜いたらふわふわと身体さえ浮いてしまいそう。
「高坂さん、こっちおいで」
リビングの入り口に立ったまま身悶えしたいのを必死に堪えていると、すたすたと部屋の奥に進んだ樋泉さんが右手にあるドアを開けて手招きをする。
どうやら隣にもう一つ部屋があるみたい。
私は樋泉さんに誘われるままピューンと飛んでいき、隣の部屋をひょいっと覗き込んだ。
「わっ、すごい……!」