どうぞ、ここで恋に落ちて
そこで私は突然、隣がリビングなら、ここは寝室として使われている部屋なんじゃないかということにようやく思い至った。
というか……よくよく考えたら私、樋泉さんのベッドの上に座ってる!
かあーっと肌が熱くなり、そのことを頭から追いやるように必死で口を動かした。
「えっと……それからも、樋泉さんが何度も私の助けになってくれて、だから……樋泉さんは素敵な人だから、惹かれるのは仕方ないって……」
私が見るからに動揺し始めたことはバレバレなはずなのに、樋泉さんは私をジッと見つめて離さない。
樋泉さんの熱を燻らせた黒い瞳が、私の鼓動を加速させる。
「……憧れだったんです。ずっと、最初から」
身体中を駆け巡る血液と、ドキドキと鳴る心臓の音がすぐ耳元で聞こえるみたい。
頬が火照って、瞬きさえ忘れそう。
指先が痺れるほど緊張してるのに、切なげに細められた彼の瞳から目を逸らすことができなかった。
ふたりの間には逆らえない引力が存在していて、交わった視線を辿って少しずつ引き寄せ合う。
そしてまるで魔法にかけられたかのように、私はゆっくりと瞼を下ろしていく。
「樋泉さんみたいな人が、私を好きになってくれるわけないって思ってたけど……だけどもう、どうしようもないほど好きになっちゃって、それで……ん」
往生際悪くしゃべり続ける私の唇を、樋泉さんのキスが優しく塞いだ。