どうぞ、ここで恋に落ちて
「あら、本当に樋泉さんなの?」
咲さんは少し驚いたように垂れ目を軽く見開き、パチパチと瞬きをする。
それから妙に感心して何度か頷いた。
「最近の古都ちゃん、なんだかふわふわキラキラしてるから恋人でもできたのかなって思ってたの。だけど古都ちゃんってチャラチャラした男は嫌いそうだし、"俺についてこい"系の男も苦手そうだし、恋人に選ぶなら樋泉さんみたいなタイプかなって思って」
「あ……うっ……」
なんだ、樋泉さんの名前を出したのはただの勘だったんだ。
だけど咲さんの言うことがあまりに図星なので、私は頬を火照らせて視線を泳がせる。
「お、おっしゃる通りで……」
言い当てられて恥ずかしいような、でも恋人候補としていちばん初めに彼の名前をあげてもらえたのが嬉しいような、なんとなくくすぐったさを感じて肩を縮める。
「ふーん、そうなの」
咲さんが驚いたのは最初だけで、照れる私をよそに、新しくお店に届いた雑誌に大振りの付録を挟み込むという作業を淡々と進めている。
それを見て私も慌てて止まっていた手を動かし始めた。
近頃の少女向け雑誌などはとくに付録の方が豪華だったりして、こうやってひとつひとつ本誌に挟むのも大変な作業だ。