どうぞ、ここで恋に落ちて
だけど咲さんは次の瞬間、白い頬にほんのわずかな赤味を咲かせ、長いまつ毛を伏せて愛おしそうに微笑んだ。
「でもね、10歳も年上のあの人のダメなところを知ったとき、なんだかかわいいなって思っちゃったの。幻滅するどころか、もっと好きにさせられる予感がした」
そう言う咲さんはその言葉通りに、困ったように眉を下げながらもすごく幸せそう。
かわいいなあ、咲さん。
なんだかんだと言っても、旦那さんのことが大好きなんだろうなあ。
私もこんな風に、いつまでも樋泉さんのことを好きでいられたらいいなあ……。
私が咲さんの表情に見惚れてポーッとしていると、いたずらっぽく目を細めた咲さんがくるりと振り向いた。
そして私の肩をポンと叩く。
「ダメなところさえ好きって思わされたら、もう降参だよね」
「え……」
言われたことの意味がわからずポカンとする私に対して、咲さんには何故か何もかもお見通しらしい。
私が樋泉さんのどんなところを好きになって、どれほど好きにさせられているかも。
咲さんは何事もなかったように作業を再開したけど、その横顔は少しだけニヤニヤして見えて、私の頬はボンっと熱を上げた。
「なっ、な、なんで……?」
「んー、なんとなくかな。あれだけ"スーパーヒーロー"だなんて崇めてた人に恋をするって、そういうことじゃない?」