どうぞ、ここで恋に落ちて

私は彼のすらりとした見た目からは意外なほど硬くて広い胸に手を置いて、アーモンドの形をした両眼をまっすぐに見上げた。


お願い、樋泉さん。

ダメでキュートな樋泉さんを私だけにたくさん見せて、そして安心させて欲しいの。

今はあなたを好きだってこと以外、どんな感情も抱きたくない。


「いつかって、いつですか? 樋泉さんだけの特別な方法、使ってくれるの」

「え……こ、と……わっ!」


私は樋泉さんが目を丸くして瞬く隙に、胸に付いた手のひらに体重をのせてぐっと押した。

そのまま倒れてしまわないように樋泉さんが慌ててバランスをとる。


私は彼の胸の中に身体を預けたまま、私を支えて倒れないように必死な樋泉さんから奪い取るようにキスをした。

樋泉さんが驚いて目を見開く。

鼻先の触れる距離で彼の黒い瞳をじっと見つめ、もう一度しっかりと唇を重ねた。


自分と私の身体を支えたまま固まってしまった樋泉さんの反応が怖くて、心臓が太鼓のように鳴り響いている。

震える指先を隠すように、ぎゅっと手のひらの中に握りしめた。


「古都、ちょっ……待って」


余裕のない、押し付けるようなキスをする私に、焦って困惑する樋泉さんの両手がどうすることもできずに彷徨っている。
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