どうぞ、ここで恋に落ちて
だけど今日の色葉ちゃんは水色のワンピースを着ていて、いつもは三つ編みお下げにしている艶やかな長い黒髪も頭の高い位置でポニーテールにしてある。
薄くお化粧もしているみたいでいつもより大人びているし、きっと普段の色葉ちゃんを知っている人が見たらびっくりするはずだ。
色葉ちゃんって、将来絶対美人さんになると思う。
「ちょっと待ってね、注文してた本だよね?」
今日は色葉ちゃんがずっと前から注文していた海外ファンタジー小説の発売日だから、彼女がそれを受け取りに来たことはすぐにわかる。
レジの後ろにある注文された本がまとめて置かれている棚を見ると、咲さんが気付いてわかりやすいところに置いておいてくれたのか、探すまでもなく色葉ちゃんの本が見つかった。
「これだよね、いつもありがとう。今度感想聞かせてね」
お金を受け取って、店のカラーである紺色の紙袋に入れた本を渡す。
待ちに待った小説を手にしても、色葉ちゃんはどこか気もそぞろな様子で、ソワソワしながら横目で店内を見回していた。
どうしたんだろう。
何か探したい本でもあるのかな。
その割にはレジの前から動こうとしない色葉ちゃんに、何て声をかけようか迷っていると、彼女のほうが先に思い切ったように口を開いた。