どうぞ、ここで恋に落ちて

「あのさ、なんていうか、この状況でそれはすごい殺し文句だよね。俺だって古都には、他の誰かじゃなくて、俺がっていうか、俺をっていうか、上手く言えないけど……」


眉を下げてタジタジになる樋泉さんがあまりにキュートで、私はくすぐったさに身を捩るようにして頬を綻ばせた。

樋泉さんは拗ねたように口を尖らせる。


「なんで俺ってこういうときかっこつかないんだろう」

「でも、そんな樋泉さんが好きです」


私は背中を伸ばして、樋泉さんの赤い頬にチュッとキスをした。

互いの鼻先で見つめ合うと、その瞳の奥には抑えきれない欲が見え隠れする。


もっと知りたい、もっと近付きたい。

かっこうなんてつかなくていいから、飾らない本音を触れ合わせたい。

そういう恋を、この人としてみたい。


目を閉じると同時に、樋泉さんのキスが唇を塞いだ。

絡めとるように深まるキスに応えたくて彼の背中に腕をまわすと、私を抱きしめる腕が心地よく身体を締めつける。

右と左で高鳴る鼓動が合わさると、お互いの緊張が伝わって下ろした瞼の奥で目が回った。

それでも樋泉さんの指先は、緊張でぎこちなくなる私とは反対に、どこまでも優しく丁寧に私の髪や肩や背中に触れる。

少しずつ、身体に重みが加えられていく。
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