どうぞ、ここで恋に落ちて
床に打ち付けられた樋泉さんの額は、若干赤くなっている。
「ごめん。背中、痛くしたくないから」
樋泉さんは照れくさそうに小さく笑って、私のシャツの胸元を大きく開き、肩口にキスをするところから再開した。
器用な指はさっさとボタンを全て外し終え、スカートからシャツをそっと引っ張り出して、もう片方の手は続けて自分のシャツのボタンを解放していく。
私の見開かれた目には、時折顔を上げる樋泉さんの男性らしい喉元が映る。
そうこうしているうちに樋泉さんの手のひらが背中をなで、素肌を辿って私の熱を上げていき、暴れる心臓の上に手を置かれたときには完全に頭が沸騰した。
胸に触れる手をギュッと押さえる。
「ひっ、樋泉さん」
「なに? 古都」
樋泉さんは片方の手を胸の上に置いたまま、もう一方の手で慰めるように髪をなで、頬をなでて、私が落ち着くのを待った。
私は目眩が収まってから、小さく深呼吸をする。
それからゆっくり樋泉さんの手を放すと、腕を伸ばして彼を引き寄せ、唇を重ね合わせた。
「あの、大好きです」
小声で囁くと、樋泉さんはホッと頬を綻ばせる。
「俺も好き」
そして彼の手が再び動き出し、私も心の向くままに、樋泉さんの肌に指を触れた。