どうぞ、ここで恋に落ちて
22.本屋は恋に落ちる場所
それから10日後の長月初日。
一期書店春町店のイベントコーナーが作り替えられ、来店したお客様はお店に入るとすぐに目につくその棚にふらりと立ち寄った。
コーナーの中心に据えられているのは、栄樹社ミエル文庫の人気作家・やよいはる先生の待望の新作『公爵さまのプロポーズ! 〜偽りの出会いと乙女の初恋〜』だ。
前作がアニメ化されてからまだ一年も経っておらず、それまでのやよい先生のペースを考えれば新刊が発表されるのはかなり早い。
樋泉さんを通していただいたサイン入り色紙を飾りながら、やよい先生と担当編集の方は、いったいどんな苦労をして『公爵さまのプロポーズ!』をつくったのだろうと好奇心をそそられ、私も早くこの新作を読みたくなった。
そしてその周りには、出版社も年代もジャンルもバラバラな、いろいろな形の恋愛を描いた小説を置くことにした。
企画当初、やよい先生の新刊をメインにミエル文庫の特集を組むつもりだったけど、もっとバラエティに富んだ出会いを用意しようと思ったのだ。
私の掲げたコンセプトは、"本屋は恋に落ちる場所"。
私が中学生の頃、地元の図書館で出会った『砂糖とスパイス』に恋をしてそれ以来本が大好きになったように、新しい何かを好きになって夢中になるための出会いを、ここで見つけてほしい。