どうぞ、ここで恋に落ちて
今度はしっかり古都の目を見て言ったから、かっこ悪いことに頬が熱を持つのが自分でもわかる。
だけど仕方がない。
スラスラと言えただけでも及第点だ。
こんな俺を好きだと言ってくれる古都が喜ぶのなら、少しくらい格好がつかなくたって、もうこの際問題ではないだろう。
はにかんで小さく微笑むと、古都はまた泣きそうな顔をして笑い返してくれた。
「はい! よろしくお願いします」
それからゆっくりと惹かれ合い、目を閉じた彼女に誓いのキスを落とす。
ジッとくっついて抱き合い、只々互いの存在をそこに感じていた。
今までも、この先も、ずっとここにある小さくて愛おしい確かなぬくもりを。
「だけど洋太くん、あんまり完璧にならないでね。もう十分スーパーヒーローなんだから」
「今のプロポーズでそんなこと言ってくれるの、きっとこの世で古都だけだよ」
オーブンがチンッと軽快な音を立て、古都曰く、俺の人生を賭けたヘタレなプロポーズもなんとか無事に終えたのだった。
* * *
俺には、心を惹かれて止まない女の子がいる。
一期書店という小さな本屋で彼女に出会い、そして恋に落ちた。
かわいくて頑張り屋で強くて優しくて、素敵な笑顔を持っている。
俺を自分にとってのスーパーヒーローだなんて言って、本当に心から信頼を寄せてくれる。
俺はそんなに大した人間じゃないし、正直言って照れくさい。
だけど古都がどんな俺でも好きだと言ってくれるから、俺は彼女のために少しでもかっこいい自分でいようと、何度でも前を向くことができるんだ。
俺が守るべき存在で、そして俺を受け入れ、隣を歩き、そっと背中を押してくれる。
俺のお嫁さんになる人は、そういう人だ。
–完–