どうぞ、ここで恋に落ちて
私の担当する一般文芸書の棚にも同じく海外ロマンスの翻訳物がいくつか置いてあるけど、そちらのほうはあまり動きがよくない。
ミエル文庫を好きな女性なら、きっとコレも読みたくなるだろうと思って入荷したものばかりなのに、どうしてなんだろう。
確かにあれは、栄樹社のように有名な出版社から発行されているものじゃないけど……。
「それって、向こうの棚の下段の方に並べてあったレーベルのこと?」
「はい、他の翻訳小説と同じコーナーに置いてあります」
私がこくりと頷くと、樋泉さんはうーんと唸って腕を組んだ。
「それなら、ミエル文庫の隣に置いてみるのはどうですか? ジャンルは少し違うけど、ミエル文庫を購入するお客様の目につきやすくなるし。翻訳物の棚にあると、それだけで敬遠する人も少なくないと思いますよ」
「あ……な、なるほど」
そっか、確かにそうだ。
出版社もジャンルも違うから、一緒に並べるなんて発想はなかったけど、樋泉さんの言う通りのような気がする。
ミエル文庫を好きな人におすすめするには、ミエル文庫の近くに置かなくては伝わらない。
「あのっ、ありがとうございます! さっそく、今日中に移動させてみます」