どうぞ、ここで恋に落ちて
「実は女性と……というか、好きになった女の人と話すのが苦手なんです」
「……は?」
あまりに予想外な告白に思わずあんぐりと口を開けると、樋泉さんがさらに耳を赤くして肩を丸めるので、私は慌てて両手で口を塞ぐ。
ちょ、ちょっと待って。
好きな人と話すのが苦手?
まるで中学生の男の子みたい。
そんなの、セクシーでエレガントでいつもパーフェクトな樋泉さんからは考えられない。
何かの冗談かと思うほどだけど、目の前の恥ずかしそうな樋泉さんの様子が演技だとはとても思えなくて……。
「"この人にどう思われてるだろう"って考えると、話すにも行動するにもひどく時間がかかる。だからなのか、相手に誤解を与えてしまうことが多くて……あのメガネは、そういう自分が顔を出さないようにって、封印の意味もあるんです」
……まさか。
樋泉さんほどの大人なイケメンが、恋愛下手?
いやいや、そうは言ってもこれまでお付き合いしてきた女性だって何人もいるだろうし、最初はちょっと照れちゃうって程度で、そんなに深刻でもないでしょ。
「だけど樋泉さんなら、自分から行動しなくても、お付き合いしてほしいって言ってくる女性はたくさんいるんじゃないですか?」
少し冗談っぽくヘラっと笑ってみせても、樋泉さんは困ったように首を振る。