わたがしとキス
「あ、廉!このこももかちゃんね?この間の」
「あぁ」
この間の...という一言が気になりつつ、
ゆっくりとその先輩の顔を見上げた。
....うわぁ....かっこいい....
あたしは思わず唾を飲み込んだ。
すらっと伸びた身長は高いと思っていた勇人先輩よりさらに
ちょっと高くて、男の人なのに小さな顔。
そんな顔はびっくりするくらい綺麗で整っている。
茶髪の勇人先輩とは違って、黒髪でサラサラとちょっと伸びた
前髪の隙間からのぞく大きな目と目が合って....
あたしの身体はボゥッと火が出るように火照ったのがわかった。
しかもそんな先輩の「あぁ」って小さな一言ですら
周りの女子達はきゃっと小さく悲鳴を上げて騒ぎ出す。
気がつけばあたり一面、人!人!人!
あたしたちは注目の的になっていて、少しだけ肩をすくめた。
「2人ともコイツは廉、ちょっと愛想悪いけどいいやつだから!」
そして勇人先輩はそういって優しく微笑むと
「またなももかちゃん鈴ちゃん」と手を振って
人ごみから抜けていった。
2人についてく女子達....はまるで大名行列みたいな。
「アイドルですか...」
そうつぶやいた鈴の隣で
あたしは勇人先輩の隣でずっと無表情だった
先輩を見た瞬間の胸の高鳴りに呆然としていた。