わたがしとキス
けどそんなことより、
普通の女なら顔赤くして飛び上がるように喜ぶのに
彼女はまたぎこちなくどこか不安げな表情で「じゃあ...」と
微笑んでいた。
まっすぐ帰ると思っていたら勇人は
「せっかくだし寄っていこうぜ!」と言って
近くのファミレスに行くことになった。
終始喋り倒して、それに笑いながらあいづちを打つももかと
黙って聞く俺。
なのに時間が過ぎるのは早くて気がつけば夕日すら見えなくて
あたりは真っ暗になっていた。
「そろそろ帰ろうぜ」
別に何かがあるわけではないけど
エンドレスに話す勇人に終止符を打つように俺は
会計を済ませ立ち上がった。
「ご馳走さんでーす廉さまさま♪」
「ご馳走様でした...」
何かといつも勇人におごってもらってるし
それに女に払わすわけにはいかないから払っただけ。
そして店を出たとき___
___~♪
着信音が鳴り出したかと思えば
勇人がディスプレイをみて眉間にしわを寄せた。
「やっべ...ちょっと待ってて」
そして俺らから離れたところで電話に出る勇人。
残された俺とももかはもちろん会話を弾ませるわけでもなく
ただ帰宅ラッシュでにぎわうあたりを見つめていた。
「おまたせ!....わりぃ!」
戻ってきたかと思えば申し訳なさそうに誤ってきた。
「んだよ」
「いやちょっとさバイト先から人で足りねぇから来てくれって。...これだから金曜の居酒屋は嫌いなんだよ」