仇打ち
歴史探求部
僕は今、歴史探究部の部室の前にいる。
これから僕にとってかなり重要な話をしなければならない。恥ずかしながら、僕は橋本の話に乗ってしまった。
別に百瀬さんと付き合いたいわけではない。ただ単純に、仲良くなりたかった。地味でオタクでなんの取り柄もない僕だけど、それくらいは許されるんじゃないかと思った。嘘かもしれない。でも、簡単には諦められなかった。百瀬さんは、僕の初恋なんだ。
ガチャリ。
部室のドアノブをそーっと回した。何年か前に建て替えられた校舎たが、この場所は建て替えられなかった。
それもその筈、ここは校内の端の端の端。はりぼてのバラックで、当時の先輩はここも建て替えるようにお願いしたそうだが、なんの功績もなく、活動態度が真面目ではなかったため、予算削減のために切り捨てられた場所だった。
「遅かったな」
「お前も早くこれ見ろよ」
先に来ていた堀川と井出はノートパソコンを開いて、今絶賛人気急上昇中のアニメ、“魔女戦士ララ"を鑑賞していた。最新話だと聞いて、観たいという情動に駆られたが、僕は気持ちを落ち着かせた。
部室の壁中にはアニメや漫画のポスターが貼られている。
「我々ぼっちの拠り所は三次元ではなく二次元に昇華したのだ」今はもういないが、僕の尊敬する先輩、三瀬先輩のお言葉である。今、歴史探究部は、その活動態度の悪さから廃部の危機に晒されていた。
「今日は大事な話があるんだ」
僕はパソコンの電源を切ると同時に深刻そうに呟いた。
こうでもしないと二人は僕に耳を貸さない。部長でありながら、実に情けない姿だ。
「どうしたんだ?」
堀川とが心配そうに尋ねた。
よし、まず第一関門突破。心の中で呟いて、告げた。
「二人も知っていると思うけど、この部は廃部の危機にある……」
少し間をおくと、堀川と井出のゴクリと唾をのむ音が聞こえた。
「だから、廃部を阻止するために、真面目な活動をしてみようと思う」
言い終えてすぐに、「えー」という二人のうなだれた声が聞こえた。
僕は負けじと続ける。
「ただ、内容は面白いよ。魂霊神社の幽霊探索だ」
「幽霊探索?!」
二人はすぐに食いついた。だが、冷静な井出はすぐに考え直したのか、僕に尋ねた。
「幽霊探索がどうして廃部の危機を救うんだ?」
やはり一筋縄ではいかないな。
井出はかなり頭がいい。この前のテストでも校内で10番以内に入っていたと言っていた。井出のような頭のいい部員がいることは誇らしいことではあるが、この時はかなり厄介な存在であった。
第二関門。堀川はわりとと馬鹿だからなんともないが、何とかして井出を諭さなければならない。
必死に言いわけを考えて、言った。
「昔この地域で連続通り魔事件があったのは知ってる?」
「あぁ。」
井出は答えた。
「でも、その犯人は忽然と姿を消した。魂霊神社にでる霊がその犯人なんじゃないかっていう話があるらしい。もし僕たちが何か手掛かりを見つければ、歴史探究部の存在は広く知られることになるし、学校も歴史探究部を認めるしかなくなる。そうすれば廃部は免れるってわけ」
正直この説明で井出を完全に納得させる自信はなかった。咄嗟に思いついただけだ。もし納得してもらえなければ強引にでも合意させるつもりだった。
だが、井出は案外簡単に、
「わかった」
と言った。
第二関門はなんとか突破できた。井出も大したことないなとあまりの滞りのなさに自分に酔った。
これから僕にとってかなり重要な話をしなければならない。恥ずかしながら、僕は橋本の話に乗ってしまった。
別に百瀬さんと付き合いたいわけではない。ただ単純に、仲良くなりたかった。地味でオタクでなんの取り柄もない僕だけど、それくらいは許されるんじゃないかと思った。嘘かもしれない。でも、簡単には諦められなかった。百瀬さんは、僕の初恋なんだ。
ガチャリ。
部室のドアノブをそーっと回した。何年か前に建て替えられた校舎たが、この場所は建て替えられなかった。
それもその筈、ここは校内の端の端の端。はりぼてのバラックで、当時の先輩はここも建て替えるようにお願いしたそうだが、なんの功績もなく、活動態度が真面目ではなかったため、予算削減のために切り捨てられた場所だった。
「遅かったな」
「お前も早くこれ見ろよ」
先に来ていた堀川と井出はノートパソコンを開いて、今絶賛人気急上昇中のアニメ、“魔女戦士ララ"を鑑賞していた。最新話だと聞いて、観たいという情動に駆られたが、僕は気持ちを落ち着かせた。
部室の壁中にはアニメや漫画のポスターが貼られている。
「我々ぼっちの拠り所は三次元ではなく二次元に昇華したのだ」今はもういないが、僕の尊敬する先輩、三瀬先輩のお言葉である。今、歴史探究部は、その活動態度の悪さから廃部の危機に晒されていた。
「今日は大事な話があるんだ」
僕はパソコンの電源を切ると同時に深刻そうに呟いた。
こうでもしないと二人は僕に耳を貸さない。部長でありながら、実に情けない姿だ。
「どうしたんだ?」
堀川とが心配そうに尋ねた。
よし、まず第一関門突破。心の中で呟いて、告げた。
「二人も知っていると思うけど、この部は廃部の危機にある……」
少し間をおくと、堀川と井出のゴクリと唾をのむ音が聞こえた。
「だから、廃部を阻止するために、真面目な活動をしてみようと思う」
言い終えてすぐに、「えー」という二人のうなだれた声が聞こえた。
僕は負けじと続ける。
「ただ、内容は面白いよ。魂霊神社の幽霊探索だ」
「幽霊探索?!」
二人はすぐに食いついた。だが、冷静な井出はすぐに考え直したのか、僕に尋ねた。
「幽霊探索がどうして廃部の危機を救うんだ?」
やはり一筋縄ではいかないな。
井出はかなり頭がいい。この前のテストでも校内で10番以内に入っていたと言っていた。井出のような頭のいい部員がいることは誇らしいことではあるが、この時はかなり厄介な存在であった。
第二関門。堀川はわりとと馬鹿だからなんともないが、何とかして井出を諭さなければならない。
必死に言いわけを考えて、言った。
「昔この地域で連続通り魔事件があったのは知ってる?」
「あぁ。」
井出は答えた。
「でも、その犯人は忽然と姿を消した。魂霊神社にでる霊がその犯人なんじゃないかっていう話があるらしい。もし僕たちが何か手掛かりを見つければ、歴史探究部の存在は広く知られることになるし、学校も歴史探究部を認めるしかなくなる。そうすれば廃部は免れるってわけ」
正直この説明で井出を完全に納得させる自信はなかった。咄嗟に思いついただけだ。もし納得してもらえなければ強引にでも合意させるつもりだった。
だが、井出は案外簡単に、
「わかった」
と言った。
第二関門はなんとか突破できた。井出も大したことないなとあまりの滞りのなさに自分に酔った。